ポケモンの乱数調整の歴史

新刊に向けて「ポケモンの乱数調整とはどう生まれたのか?」を整理してみました。

発見の流れ

最初に「乱数調整」こと「電源パターン」が話題となったのは、ポケモンフェスタ(2005年7~8月)でエメラルド向けに配布された『ふるびたかいず』によって捕獲されたミュウの同一個体報告が掲示板で頻発したことです。
同じ個体が何度も出る(ループする)事から「エメループ(エメラルドループ)」と呼ばれ、エメラルドでの固定シンボル厳選は回避されるようになります。
(ちなみにこの原因はEmは初期seedが0固定で「起動から個体決定までの時間」のみで個体値&性格値が決まる仕様だった為。つまり皆A連打で再開遭遇していたから起きたのでした)

この状況が変化したのは3年後、第四世代になってから2年後の2008年。時期は9月にプラチナが発売した後の11月末、祐野氏の「ゆうのぴあ - ループの原因を調べたい」という記事が発端でした

ループの原因を調べたい - ゆうのぴあ

(https://eunopia.hatenadiary.org/entry/20081125)
「method1(seed * 0x41C64E6D + 0x6073)」の呼称導入も此処が発端。
「ストップウォッチ片手に厳選の時代。」も本当になりました。
記事にある「ダイパループ」とは「DSの時計設定を特定の時刻にすると高HP個体値のクレセリアが出やすい」という話。確か当時ポケモンフェスタに向かう電車内で私がクレセリア周回していたのもあり祐野氏を含むオフ勢の話題に出た覚えがあります。
(https://eunopia.hatenadiary.org/entry/20081127)
>究極的には、ソフトリセットからAボタン押すまでを設定時間通りに押してくれるツールが欲しくなってくるな(
>半自動タマゴ割り機が作れるんだから全自動厳選機も夢じゃなかろ
これも現在ではGC自動化によって実現しましたね。

この数日後には起動から2分ほどで「ラティオスおくびょう30-27-11-22-26-31めざ地70」が出る事が発見され、オフ会で大流行する事になりました。
一撃誌 - エメラルドで強いラティオスを厳選する方法。
(https://sheercold.blog.fc2.com/blog-entry-904.html)
この発見から「(Emで)ストップウォッチで起動から個体決定までの時間を合わせて任意の個体を出す」行為を「エメループ」と呼ぶようになります。

Q.何故「エメループ」がすぐに研究されなかったの?
A.国内ではmethodまで解析されておらず、DS版からは国内での解析がされなくなり海外の情報を利用する形になったからです。
それも海外でエメループを調べようとしたわけではなく、海外の改造ユーザーが「公式の改造判定」をすり抜けられる個体を作る為に作ったツールに由来しています。これにより分かった「method1,2,3」の式を使って国内では正規の入手法を研究したという訳です。

2009年に入る頃にはプラチナ(ダイヤモンド・パール)の固定シンボル乱数調整も方法が確立されました。
アーマーの雑記 - クレセリアを厳選する
(https://metagross-armor.hatenablog.com/entries/2009/01/02)
呼称についてはコメント欄(https://metagross-armor.hatenablog.com/entries/2009/01/01)を見るに「エメループの応用」「ループ厳選方法」となっています。

エメラルドのタマゴ孵化乱数についても同時期にアユザック氏によってベースとなる個体値の決定タイミング及び、その特定箇所に親の個体値が上書きされることが発見されています。
鮎雑句 - 確定
(https://ayuzak.hatenadiary.org/entries/2009/01/05)
鮎雑句 - タマゴの個体値の決まり方
(https://ayuzak.hatenadiary.org/entry/20090110/1231577041)
鰓日記 - エメループ調整孵化
(https://error-astray.hatenablog.com/entries/2009/01/21)
タマゴの性格値についてはこの時点では解明されておらず『かわらずのいし』頼みで、解明は7月にされています。
アーマーの雑記 - このカビゴンは光ったけど自爆する!
(https://metagross-armor.hatenablog.com/entries/2009/07/07)

FRLGの乱数調整に関しては同年4月には研究がされており、
初期seedが「タイトル画面からロード画面に進むタイミング」で決まることまで解明されました。
…が現在でも「操作を自動化した人達が得られた個体から初期seedリストを制作、それらを利用して乱数調整をする」となっているように高個体値の取得には操作の自動化を待つ必要がありました。
(https://eunopia.hatenadiary.org/entry/20090430)

そして、同年9月にHGSSが発売。以降は発売直後に乱数調整が研究されるようになりました。
ゆうのぴあ - HGSS
(https://eunopia.hatenadiary.org/entry/20090912)

「乱数調整」の呼称

上記の1月の記事を見ての通り当初は「エメループ」が発端だった為にDPtでも同様の現象を「ループ」と呼んでいました
爆速で研究が進んだ為に呼称が追いつかなかったと言った所ですが、Em以外は初期seedが変わるのであれば「ループ」ではなくないか?(https://error-astray.hatenablog.com/entry/20081217/p1)
…という事から「乱数調整」の呼称が使われ始めるのですが、起源を調べるとどうも自分が発端らしいです…
鰓日記 - プラチナの乱数調整
(https://error-astray.hatenablog.com/entry/20090305)

この呼び方は「現在のseedから初期seedを調べて、そのseedの後にある目標個体(妥協が必要)になるよう乱数を進ませる(調整する)方法」と「目標から初期seedを決め、その初期seedを狙って(調整して)出す方法」の二種類を指す。
ここで紹介しているのは後者で前者に比べ狙える個体の自由度が大きい。詳しくはアーマーさんの所を参照。

実の所は皆が「乱数を狙って調整して厳選する行為」の名称を欲していたのに噛み合って浸透した感じでしょうか。

反「乱数調整」の動き

いまでこそ「道具プリンター乱数(SV)」などカジュアルに使われている感じですが、
この2009年は急速な発展と同時に「乱数調整は外部計算ツールを使った改造と同じ物だ!反対!」という人々も生みました
幾度となくインターネット学級会が行われ、当時のブログや掲示板にもその痕跡が見つけられると思います。
その気持ちも分からなくは無いですが先述の通り乱数調整は「正規の理想個体を求めた当時のポケモンバトル最前線の人々が生み出したもの」でありその主張は噛み合いません。結果、和解するはずも無く乱数調整の浸透と反対派の沈静化を待つこととなりました。
お互い間違いなく「第三世代から7年間の厳選地獄を見てきた者達」だ面構えが違うのはずなのにどうしてこうなってしまうのか…。
もちろん自分達の為の研究でもありますが、その手法を惜しげなく公開するのはポケモンバトルの発展を願っての事に違いありません。
結果として「すごいとっくん(第七世代~)」や「ミント(第八世代~)」登場まで必須の技術として使われるようになりましたが当初はこのような反発もあったのでした。